近年、”高流量” や “高性能” をうたいながら、相場とかけ離れた低価格で販売される水素発生器が目立つようになってきました。
スペックや価格だけを見比べると、「この性能で、どうしてここまで安く提供できるのだろう?」と魅力的に映り、つい購入に踏み切りたくなる製品もあるかもしれません。
しかし実際には、海外から輸入した 本来は産業用(工業用)の水素発生器 を、日本国内で “吸入(ヘルスケア)用途” に転用しただけの製品が一定数存在し、それらが 安全・安心の「日本製」 として販売されているケースも確認されています。
もちろん、産業用水素発生器のすべてが危険というわけではありません。しっかりと安全性を考慮し、独自に対策を施しているメーカーもあります。
しかし一方で、人体吸入に必要な安全設計がほとんど行われていない製品も実在することは確かであり、これこそが注意すべきポイントです。
本記事では、
「知らずに危険な機器を使ってしまうユーザーを守りたい」
「日本に正しい水素吸入を普及させたい」
という目的で、事実に基づく情報のみをお伝えしています。
産業用水素発生器は「人が吸うこと」を想定して作られていない
産業用水素発生器の本来の用途は、以下のようなものであり、そもそも人体吸入は“想定外” です。
・金属溶接
・切断加工
・加熱処理
・工場設備のガス供給
・バーナー燃焼
そのため、吸入用途に必須である次の項目が根本的に欠落しています。
■欠けている項目
・電解液の飛沫分離(ミスト除去)機構
・医療グレード素材(ISO 10993 生体適合性)
・ガス純度管理(微粒子・金属イオン・不純物)
・微粒子除去フィルター
・細菌・カビ対策(バイオフィルム対策)
・生体実験
・血中水素濃度の測定データ
すべて
医療およびヘルスケア用途の機器なら必ず必要な要素 です。
工業用電解槽は高温・高濃度アルカリ液で動作するため、ミスト混入リスクが高い
産業用水素発生器は、高濃度KOH/NaOHのアルカリ電解液、40〜60℃以上の高温運転、工業グレード隔膜を使用してガスを発生させます。
その構造上、
・アルカリ電解液の飛沫(ミスト)
・金属イオン
・隔膜の微細破片
・高温ガス
が排出ガスに混入しやすく、これらを吸入することは、気道・肺に対して深刻なリスクとなります。
医療機器には多段ミスト分離装置が必須ですが、産業用にはほぼ搭載されていません。
逆火(バックファイア)・内部爆発のリスク構造
HHO(Hydrogen + Oxygen)は可燃混合ガスです。医療機器は「逆火が発生しない構造」が義務化されており、以下のものが複層的に備わっています。
・逆火防止弁
・圧力センサー
・温度センサー
・自動シャットダウン
・ガス冷却構造
一方、産業用水素発生器は、
・バーナー接続前提
・火気の近くで使用前提
・逆火は“想定して逃がす”構造
となっており、吸入では致命的です。
安価な高流量機器では、
・逆火防止が簡易
・圧力監視なし
・温度センサーなし
・低品質樹脂部品
というケースが多く、逆火 → 電解槽破損 → 発火事故が起こり得ます。
医療用途に必要な素材基準を満たしていない
医療機器に求められる素材は、すべて「生体適合性基準(ISO 10993)」をクリアしている必要があります。
しかし産業用水素発生器は、
・錆びやすい一般金属
・工業用PVC・ゴム
・耐久性の低い工業配管
・化学的安定性が不足する樹脂
が使われることが多く、吸入ガスが化学的変質や金属溶出、微粒子混入を起こすリスクがあり、ガスの安全性そのものが保証されません。
臨床試験・血中濃度データ・安全性試験が“ゼロ”
産業用水素発生器は、以下のような大切なものがほとんど欠けています。
・臨床試験
・血中濃度上昇データ
・再現性試験
・毒性試験
・長期吸入試験
・医療安全基準
つまり、「どのくらい濃度が上がるのか」など、医療やヘルスケア用途で必要なデータが一切確認されていない機器で吸入することになり、これは医学的に非常に危険です。
安価で高流量を実現できる = 医療基準の安全設計を省略している
医療グレード高流量機器は、
・安全センサー
・医療素材
・大型電解槽
・冷却システム
・逆火防止
・圧力制御
など、多層の安全設計を備えているため、構造が複雑で高価になります。
一方、産業用流用機器は、
・医療部品ではない
・安全センサーが少ない
・簡易構造
・電解槽が産業グレード
だから安価で製造・販売できます。
つまり「高性能」で「安い」ではなく、「医療およびヘルスケア基準ではない仕様だから安い」が正解なのです。
本記事は「他製品」批判が目的ではなく、ユーザー保護が目的
本記事では、医療研究に基づく発信、科学的根拠の普及、安全な水素吸入文化の形成を目的としており、特定メーカーへの批判ではありません。
これらの事実を伝える理由はただひとつです。
「誤った情報により、ユーザーが危険な機器を吸入に使ってしまうことを防ぐため」
正しい情報を選べるユーザーが増えることで、日本全体に“正しい水素吸入の文化”を広げていけると考えています。
少しでも参考になれば幸いです。