こんにちは。Suifeelチームです。
今回は、水素吸入がもたらす驚くべき医学的効果に関する最新情報をご紹介します。
なんと、「水素酸素混合ガス吸入によって、死に至る病ともいわれる“ 肺線維症 ”の進行が逆転する可能性がある」という研究が、世界最高峰の科学誌『Science Advances』に掲載されました。
肺線維症とは?「がんではないが、がんのような病気」
肺線維症は、肺の組織が硬くなり(線維化)、呼吸がどんどん困難になる進行性の難病です。
初期には症状がほとんどなく、気づいたときにはすでに呼吸困難が深刻になっているケースも多いのが特徴。
診断後の平均余命は3~5年とされ、「がんではないが、がんのように命に関わる病」とも言われています。
肺線維症は慢性かつ進行性で致死性のある間質性肺疾患であり、肺組織に瘢痕化や硬化、革のような変化が起きることで、肺が自由に膨らみにくくなります。その結果、酸素が体内に取り込みにくくなり、呼吸が困難となり、最終的には呼吸不全で死亡に至ることが多いのです。
肺線維症は大きく分けて以下の3種類に分類されます:
・特発性肺線維症
・続発性肺線維症
・遺伝性肺線維症
なかでも最も一般的なのが特発性肺線維症で、別名「ヘチマ肺(Loofah lung)」とも呼ばれています。これは最も危険な間質性肺疾患のひとつであり、人口10万人あたり14〜43人に影響を及ぼしているとされています。
水素で“治らない病”に光明が?
そんな絶望的ともいえる肺線維症に対し、新たな希望が見えてきました。
アメリカ・カリフォルニア大学、マカオ大学、香港大学などの研究チームは、水素酸素混合ガス吸入を併用することでRNA治療薬の肺内送達が格段に向上し、肺線維症の進行を逆転させることに成功したと報告しています。
この成果は、世界の科学界でも権威ある雑誌『Science Advances』に掲載されました。
論文タイトルは、「水素による気道粘液バリアの破壊が、ネブライザー経由のRNA送達を促進し、肺線維症を逆転させる」[1] です。
エアロゾル吸入システムの概略図
(A) HNPs/TGFβ1 siRNAの構築
(B) SuifeelによるHNPs/TGFβ1 siRNAのネブライザー吸入
(C) HNPs/TGFβ1 siRNAの細胞内取り込み
水素がRNA薬を“肺の奥深く”まで届ける
研究チームが開発したのは、「水素酸素混合ガスを吸入しながらRNA薬をネブライザー吸入する」という新たな投与システムです。
この研究では、水素酸素混合ガス吸入器(Suifeel)を使用して、ネブライザーでエアロゾル化された脂質ナノ粒子(LNPs)が粘液バリアを通過しやすくなるようにし、振動メッシュ式のネブライザーを使った吸入システムを設計。中心室から6つのマウス拘束装置に接続し、特定の水素濃度で低用量LNPsの制御吸入が可能となっています。
さらに、研究チームは、pH依存で電荷反転する脂質膜をアポトーシスT細胞膜とハイブリッド化して、エンドソームからの脱出効率を高め、肺修復を促すマクロファージの活性化を狙ったハイブリッド脂質ナノ粒子(HNP)を開発しました。
ポイントは以下の通り:
・水素が気道の粘液バリアを破壊し、薬剤の浸透を促進
・特殊なナノ粒子(HNP)が肺の奥深くまで薬を届ける
・吸入後72時間たっても薬剤がしっかり肺に残留
・線維化を引き起こすシグナル(TGFβ1)をブロックし、肺修復を促進
つまり、水素の物理的特性(粘度が低く、空気抵抗を減らせる)が、薬の“ 通り道 ”をつくり、効果的に肺へ届ける“ 橋渡し ”のような役割を果たしているのです。
肺組織におけるナノ製剤の解析
その結果、吸入から72時間後でも肺組織内に強い蛍光シグナルが確認され、HNPが肺内に高い滞留性を持っていることが明らかとなりました。また、水素化HNP吸入により肺の奥深くまで効果的に到達・沈着し、標的指向性も非常に高いことが実証されました。
この水素化HNPにより、TGFβ1 siRNAを効率よく肺に送達でき、肺線維症の治療的逆転が可能であることが示され、大きなブレークスルーとなりました。
肺線維症だけじゃない!COPDや喘息にも期待
この研究は、水素吸入が他の呼吸器疾患にも有効である可能性を示唆しています。
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・喘息
・粘液性の肺疾患全般
また、水素酸素混合ガス吸入器によって供給される水素が、ナノ粒子と粘液の相互作用を分断し、HNP/TGFβ1 siRNAの線維化病変部への沈着を促進し、線維化シグナル伝達を阻害。
これにより、臨床的にも実現可能なPF治療戦略を提供しています。
この水素の特性は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)[2]、喘息[3]、肺線維症[4]など、他の粘液性閉塞性肺疾患にも応用が期待されます。
水素吸入×希少疾患治療という未来
さらに、水素は「薬の運び屋」として、現在開発中の希少疾患向けの新薬(約7,000種以上)の効果を高める可能性もあります。
副作用が少なく、身体にやさしい天然分子である水素が、医療の“黒子役”として重要なポジションを担う日も遠くないかもしれません。
最後に
これまで“治らない病”とされてきた肺線維症。しかし、水素のチカラと最先端のナノ医療技術の融合によって、その常識が覆ろうとしています。
私たちが日々提案している水素酸素混合ガス吸入(Suifeel)は、まだ日本では認知が広まりきっていませんが、世界の研究は着実に前進しています。
今後も、最新のエビデンスや技術トレンドをお届けしてまいります。
Resources:
[1]Liu C, Tian X, Wang Z, Mak JCW, Mao S, Liu TM, Zheng Y. Hydrogen-induced disruption of the airway mucus barrier enhances nebulized RNA delivery to reverse pulmonary fibrosis. Sci Adv. 2025 Apr 18; 11(16):eadt2752.
[2] Zheng et al. Hydrogen oxygen therapy for acute exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease: results of a multicenter, randomized, double-blind, parallel-group controlled trial. Hydrogen/oxygen therapy for the treatment of an acute exacerbation of chronic obstructive pulmonary disease: results of a multicenter, randomized, double-blind, parallel-group controlled trial. Respir Res. 2021 May 13; 22(1):149
[3]Huang et al. Hydrogen inhalation enhances alveolar macrophage phagocytosis in an asthma model. Hydrogen gas inhalation enhances alveolar macrophage phagocytosis in an ovalbumin-induced asthma model. International Immunopharmacology. 2019 Sep; 74:105646
[4] Gao et al. "Hydrogen inhalation attenuates pulmonary fibrosis by inhibiting the TGF-β1 pathway" Experimental Physiology. Exp Physiol. 2019 Dec;